ZOOMによるリモートではありますが、すっかり機会が減ってしまった飲み会のような雰囲気で、ざっくばらんにお話をいただければと考えております。
それでは只今より、「居酒屋日俳連 先輩方に、今更聞きにくいこと聞いてきました!」始めさせていただきます。
お相手は…
目次
- 「居酒屋日俳連」開店!
- ①なぜ事務所は日俳連への登録を勧めるのでしょうか。また日俳連という組織はどんなことをしている組織なのでしょうか。
- ②もし日俳連が無くなったらどのようなことが起こるのでしょうか?
- ③私達が納めている「賦課金」は何に使われているのか。教えてください。
- ④日俳連の成り立ちを教えてください。先輩方から、日俳連が「できるまで」はよく聞くのですが、「できてから」の話は聞いたことがないので、初期の日俳連はどのような活動をしていたのでしょうか、教えてください。
- ⑤テレビ、映画の俳優は、今のところ日俳連に入るメリットが見当たらないのですが、今後何か変化はありますか。
- ⑥『日本俳優連合』という名ですので、舞台俳優も含まれると思うのですが、舞台に関しての活動はされているのでしょうか。
- ⑦俳優と声優のお仕事の中に、声のお仕事として『ナレーション』があると思うのですが、日俳連内であまりナレーションについてお話を聞く機会がないので、ナレーションに関してなにか活動のようなものがあれば教えていただけますでしょうか?
- ⑧日俳連が今後の目標や課題としていることを、改めて具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか。
- ⑨ステップランクについて。そもそもステップランクってなんなの?というところから、今のランク制度の仕組みの最新情報を教えて頂けますでしょうか。
- ⑩日俳連の非組合員でもランクシステムを使っている人達がいる、ということを聞いたことがあるのですが、実際に組合員でなくてもランクを使って仕事をできるのですか? これまでの話を伺っていると、ランク制度は日俳連が守ってきた権利の一つだと思うのですが、それを非組合員が使えることがあるのでしょうか?
- ⑪ゲーム、アニメ、吹き替えの仕事でギャラの設定が違うのはなぜなのでしょうか。
- ⑫オーディションは仕事の一環であると思っているのですが、ギャラが支払われないのは何故でしょうか?
- ⑬登録用紙が何なのかということと、それを記入する目的について教えていただけますでしょうか。
- ⑭例えばパワハラやセクハラを受けて、「事務所には言いづらいから直接日俳連に相談したい」といったような事案が発生した場合、相談は受け付けていただけるのでしょうか?
- ⑮コロナ禍において日俳連が行っている事、業界全体と協力して行っている取り組みなどありましたら教えてください。
「居酒屋日俳連」開店!
日俳連では常務理事及び外画動画部会委員長を務めさせて頂いております。よろしくお願いいたします。
①なぜ事務所は日俳連への登録を勧めるのでしょうか。また日俳連という組織はどんなことをしている組織なのでしょうか。
ですので、事務所としては日俳連に登録することを勧めるのは当然だと思います。外画動画の場合には、皆さんランクを持って同じルールで、同じ長さの作品だったらどの制作会社の作品に出ても同じ出演料になる。こういうのができたのは日俳連が独占禁止法の適用除外団体になってるからなんですね。ですから、ランクを決めて、価格協定をして、どの会社に出演しても同じ出演料同じルールが適用されるという事は日俳連だからこそできる。
マネ協さん(日本芸能マネージメント事業者協会)、声事協さん(日本声優事業社協議会)、音声連さん(日本音声製作者連盟)と話し合いますけども、日俳連のルールとして実施することで、独占禁止法違反にはならないですね。音声連さんやマネ協さんが独自にこれを行ったら、価格協定のカルテルで独禁法違反で摘発されてしまうというふうになっております。
協約以下の条件で仕事をさせられた場合でも、協約のラインは守られるということが法律で決められています。毎年9月頃にはNHKさんと団体交渉して、次の年の出演条件を決める交渉などを行っています。
後、著作権法の改正の意見書を出したり、今年は4月1日に施行された芸能従事者の特別労災保険の加入団体を日俳連で作ろうと協議中です。民間ではとてもできない厚い補償の特別労災に、日俳連の組合員が安く入れるように計画中です。これから注目をして、日俳連労災に入ってください。そういうことで今いろいろやっておりますけども、大まかに言ってこのようなことをやっております。
②もし日俳連が無くなったらどのようなことが起こるのでしょうか?
これまで皆積み重ねてランクをどんどん上げていってたわけですが(僕は30分で12万円位ついておりました)、民放ランクが終わった事によりドーンと落ちて最低ランク4万円です。ドーンと下がりました。みんな下がっちゃって、一本一本、出演には個別交渉という形になりました。役者個人では力が及びませんし、マネージャーもとても交渉しきれない。ですからみんなひどいギャラになったという事がありました。だから民放は、ギャラの点では1999年を境に、えらく変わったんだと思います。
我々の出演条件は法律で保証されるものでありませんから、それを法律に変えていくという努力もしなきゃいけないな、というふうに思っております。
先に進ませていただきたいと思います。次の質問の方、お願いします。
③私達が納めている「賦課金」は何に使われているのか。教えてください。
毎月、財務は収支をチェックします。そして決算書ができた時は、員外監事と組合員の中から選ばれた2人の監事、合わせて3人の監事さんが、また更に二重、三重にもチェックをしており、皆様から頂いた賦課金、維持会費それから分配手数料など、正しく、きちんと大切なお金が使われているかということをチェックにチェックを重ねて、事務局会計の小西さん、専務理事の池水さんとも連携し、しっかりと運営しております。
④日俳連の成り立ちを教えてください。先輩方から、日俳連が「できるまで」はよく聞くのですが、「できてから」の話は聞いたことがないので、初期の日俳連はどのような活動をしていたのでしょうか、教えてください。
なぜその頃に設立されましたかと言いますと、昭和36年に著作権に関する「ローマ条約」というものが出来ました。その頃の日本の著作権法は明治29年に作った古い著作権法があったのですが、その間に映画が出来て、レコードや放送が始まり、ものすごいメディアの進歩がありました。そのため法律が古くなりすぎてしまい、新しくしなければならない。ということで、昭和37年に政府は「著作権審議会」を作って、旧法を全面改正する方針を出しました。
それを契機に、俳優や音楽家など様々な権利者が、自分の団体を作り権利主張を始めたのです。「日本放送芸能家協会」もその一つで、法改正の場で一生懸命議論をしました。
どういう事かというと、第一項に「録音、録画権を実演家に与える」という立派な権利がありました。でも第二項で「実演が映画に固定されたら、権利は適用されなくなる」ということがいきなり書いてあるんです!即、第二項でもって権利が殆ど無くなってしまう、そういう法律構成になってしまって決して満足できるようなものではなかった。それがいまだに続いているというのが現状なんです。ですから我々も映画やアニメーションといったものに出演しても著作物としての権利はないんです。
だけど我々は「結束」でリピート料、ビデオ化使用料、送信可能化権などを勝ち取りました。
しかし著作権では法律にまだ何も書いていないのです。1999年頃でしたか、「テレビ番組のビデオ化使用料不払い事件」というのがあって、それが表沙汰になって、結局足掛け13年くらいかかって、ビデオ化使用料を払わせることが出来ました。これは最高裁で認められたことであって、法律と同じ効力を持っているということです。国民の皆様もそれを知っていて、実際そのように世の中動いております。それ以来、ちゃんと使用料を支払ってくれるようになりました。日俳連のルールは「この業界で慣例となった商取引である」と認められたのです。
ただこれから何があるかわからない。なので、これをきちんと法律で裏付けをしなければならないのです。これからも法改正、映画の権利を確立するための運動を続けていかなければならない。こうした活動を続けながら、今に至るということです。
⑤テレビ、映画の俳優は、今のところ日俳連に入るメリットが見当たらないのですが、今後何か変化はありますか。
つまり我々日俳連が目指してるものってのは、ルールを法制化して追加して、映像あるいは映画に出てる俳優さんたちの二次使用料もしくは再放送料、そういうものも貰えるようにしよう、ということを目指してるんですよね。
そのためには、活動する人が多ければ多いほど力になっていくんですよね。今、日俳連は国際俳優連合(FIA)という外国の俳優団体と連携して、日本の国内法を改めましょうという運動をしてますけども、これを守っていこうよ改革していこうよっていう思いが強い人がたくさん集まることによって実現していく。簡単に言うと10人居るうちの8人が改革に賛成だって言えば「今のままでは駄目ですよ、今のままでは私達出演しませんよ」と、出演拒否のデモを行う事が、日俳連にはできるんです。
だから一人でも多くの映像の方たちが日俳連に参加してくれることによって、それが大きな力になっていく。今は目の前にある果物は取れないかもしれないけども、もっともっと先にある果物が取れるようになる。それが日俳連に所属してもらう目的なんです。
でも映像の人たちにメリットはあるんですか?って言われると、今、目に見える果物が、メリットがないからなかなかそっちから入ってこない。だからそっちの方はどんどんどんどん、お年を取ってお辞めになる方とか、自然現象的に減ってしまって。声優の人達は新人登録をし、日俳連に入りランクを持つっていうルールの上で入ってきてくれてますから、2,600人ぐらいの日俳連の組合員の内2,000人ちょっとが声優になってしまってるんです。でもこれはね、ホームページやなんか見てくれればわかるんですけども、別に声優だけの活動してる団体じゃないんですよ。日俳連は俳優、芸能実演家の権利をちゃんと守るための法整備をしてきましょう、法律を作りましょうっていうことを主たる活動としている団体ですから。だから映像の方達もぜひ入って来て頂いて一緒に声をあげていただきたいと思っております。
僕らも舞台に立つこともありますし、役者の方々と今回のような話も出来るようになりますので、非常に助かりました。ありがとうございました。
⑥『日本俳優連合』という名ですので、舞台俳優も含まれると思うのですが、舞台に関しての活動はされているのでしょうか。
かつては、日俳連でもワークショップっていうかクラブ活動って言ったらおかしいけれど、フリーの舞台俳優さん達でいろんな舞台をやってたんですよ、同好会として。日俳連の組合員による同好会で舞台上演したりしてました。もうお亡くなりになった高城淳一(たかぎじゅんいち)さんがリーダーの同好会があったんですね。沢山の人がそれに参画してました。舞台を年に一度、必ずやってましたね。よく観に行きました。
平田京子さんはそれにも参加し舞台をやってました。それから現在、狂言の会と方言の会が日俳連内にあります。そこで平田京子さんは活動してらっしゃいます。そして今コロナ禍だからなかなか実現はできないんですけど、方言の会にしても狂言の会にしても公演をしたり活動はしています。
⑦俳優と声優のお仕事の中に、声のお仕事として『ナレーション』があると思うのですが、日俳連内であまりナレーションについてお話を聞く機会がないので、ナレーションに関してなにか活動のようなものがあれば教えていただけますでしょうか?
日俳連は1967年の設立以降、その歴史的経緯を経て、外国作品・動画作品に対しては「基本ランク」「作品の長さ」「目的別利用料率」の3要素により出演料が決定します。
これは、長い年月をかけて「日俳連」「音声連」「マネ協」「声事協」の4団体が、業界発展のために手直ししながら作り上げてきた「外画動画出演実務運用表」の存在があります。この運用表は、2005年の「アニメ裁判」で、最高裁判所が認め、日俳連の完全勝利に漕ぎつけた画期的な判決でした。
ご質問の『ナレーション』に関しましては、局制作ですと局ランクで対応しているケースもあるようですが『ナレーション・ゲーム・ボイスオーバー・ラジオドラマ』等々の音声出演に関しましては、各プロダクション・事務所にお任せしているのが現状です。
声の仕事に関してはなんとなく日俳連のルール内というざっくりとした認識でしたが、各プロダクション・事務所に任されている交渉もあることをしっかり自覚することで、避けられるトラブルもあると改めて思いました。ご回答ありがとうございます。
⑧日俳連が今後の目標や課題としていることを、改めて具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか。
1.組合員の増加をはかる為、活発に諸事業に取り組む。
2.後進が参加しやすく、共に歩める環境作りを目指す。
3.コロナ禍で行ってきた、組合員にとって有利な支援策を作るための、政策提言を継続する。
4.映画に関する俳優の権利を拡大する為、著作権法の改正に取り組む。
5.実演家への労災保険適用を推進していく。
6.俳優をハラスメント防止法の保護対象とするよう取り組むと同時に、ハラスメント被害に悩む組合員をバックアップする。
7.俳優・実演家のために働く日俳連のイメージを強く打ち出していく。
1.「映像舞台部会の組合員を増やす事」
4月末現在で、総組合員数2,577人中、映像舞台の組合員数は522人(20.3%)に留まっておりまして、映像舞台の組合員数を増やしていく事が大切と考えております。もしも日俳連として「特別労災加入」の道が臨時総代会で承認されれば、広く映像舞台分野の方々に加入を働きかけ、日俳連の加入促進に繋げられたらと思います。
2.「各部会・各ジェネレーションの組合員の皆様からの意見集約の実現」
時代の流れの中で、俳優・声優を取り巻く環境は大きく変わってきています。各ジェネレーションで、様々なご意見があると思います。またコロナの影響で、役者同士の意見交換もできなくなっています。このような現状は、言うならば足腰の筋肉が細くなってきているのかもしれません。各ジェネレーションの組合員の方々からの意見を集約し、活発な活動をする日俳連であって欲しいと願っています。以上、私なりの課題でした。いかがでしょうか。
まずは、リーマンショックによる芸団協の推進事業であった芸能人年金の廃止。これは、私達弱い立場の実演家は、国民年金を満額かけても十分な金額が貰えないなかで、自分たちがリタイアしたときのために自分たちで年金を積み立てましょう、ということで始まったんですが、リーマンショックで運用がうまく行かず打ち切られてしまった。日俳連としては加入者がとても多かったので、芸団協の総会で「打ち切りではなく、少なくともすでにリタイアした実演家に対しては少額でもいいから終身で支払うべきだ」と戦ったのですが、それも認められませんでした。そのため映像舞台の方々が離れていってしまったという背景があります。
また、映像の方々のランクの底が抜けて、ギャラが低い方に低い方にと行ってしまったのも大きな原因の一つだと思います。
続けて質問させてください。今度は声優の事に関しての質問です。ジュニアの方々が一番知りたい話題だと思うのですが、
⑨ステップランクについて。そもそもステップランクってなんなの?というところから、今のランク制度の仕組みの最新情報を教えて頂けますでしょうか。
新人が起用されるのは圧倒的にCSが多く、新人の場合CS番組は1本、仮に60分としますが、ギャラは8,000円。これが3年経過して最低ランクがつくと、60分のCS番組1本では15,000円に時間割増が1.5、加えて目的別使用料が1.05が掛かってきます。つまり、「15,000×1.5×1.05=23,625円」になって、今まで8,000円だった人が約3倍のギャラになってしまうわけですね。CSの番組では長くシーズンが続いていくものもあるわけですが、その途中でランク保持者になってギャラが上がったことによって、役を降ろされて別の新人に代わってしまうということが多発したんです。
それを受けてマネージャーさん達から「何とかなりませんか?」「とにかく役を降ろされないように緩衝地帯を設けて欲しい」という相談を数多くいただきました。
ランク10,000円で出演すると、さっき申し上げた数式に全部当てはめていくと15,750円になって、ギャラの急な値上がりが緩和されるため、役を降ろされることが減るんではないかという考えのもとできたのがステップランクになります。
基本的には我々のルールの中でお仕事をしてもらうために新人登録をしてもらい、ゆくゆくは日本俳優連合へ入ってきて、我々と同じサイドで、みんなでこのルールのもとで働いていきましょうというのが大前提で、このステップランクを設けているんですね。
今のお話はステップランクについてでしたが、今度は我々が今使っている『ランク』について聞いてみたいのですが、以前、ランクは一度上げると下げられないと聞きました。実際のところどうなんでしょうか?
現状はランクの上げ下げは自由です。ただし、年1回。毎年1月のランク申請のときにその年のランクを決めるシステムになっています。
ランクに関してもう一つ伺いたいのですが、
⑩日俳連の非組合員でもランクシステムを使っている人達がいる、ということを聞いたことがあるのですが、実際に組合員でなくてもランクを使って仕事をできるのですか?
これまでの話を伺っていると、ランク制度は日俳連が守ってきた権利の一つだと思うのですが、それを非組合員が使えることがあるのでしょうか?
ここで日俳連の組合員と非組合員が同じなのはおかしいんじゃないのかという話になったんです。それから日俳連の組合員以外はランク表に載せないという取り決めにしようとしたのが6年ほど前だったと思います。
今でも組合員以外でランク料金を使っている人はいるでしょうが、その人はランク表には載りません。つまり音声制作会社は毎回事務所にギャラの問い合わせを行い、そこからオファーできるかどうか考えなくてはいけない、煩わしい作業が増えてしまうんですね。それと、もう一つ。これは大きな話なんですが、ハリウッドメジャーなんかは音声連に対して「日俳連の組合員以外使うな」とか「組合員だけで配役しろ」と言ってくることがあるらしいと聞いたことがあります。
なぜかと言うと、先程島田さんが仰ったように、実務運用表というのは最高裁でお墨付きをもらった出演条件なわけです。ということは、「組合員=日本俳優連合の役者を使えば、あとから問題が起きない」んですよね。決められたルールの中で仕事をしますから、間違いが起きないんです。つまり彼らから見たら、一番安全な俳優なんですよ。ハリウッドメジャーはそういったことに特に敏感に反応しますから、あとからなにか問題が起きるのは絶対に嫌なわけです。
時々タレントさんが吹き替えをすることがありますが、その時はものすごい膨大な契約書にサインさせられるそうです。ときには数百枚なんて話も聞いたことがあります。ところが日本俳優連合の役者を使うときには、そういったことは一切ありません。実務運用表がある以上、契約書にサインしたと同等の価値があるわけです。
ただこのローカルルールを破ってしまえば裏切り者になってしまいますから、そんなことをする組合員は当然いない。で、マネ協・声事協傘下の声優さんたちに対してはマネ協・声事協が「日俳連の組合員ではありませんが、絶対にそんなことはさせません」と言っているから使ってもらえているのであって、これがフリーであったら全くわからないし、使う側も信用ができない。
⑪ゲーム、アニメ、吹き替えの仕事でギャラの設定が違うのはなぜなのでしょうか。
実務運用表に関しては、アニメーション作品出演規定というのもあり、外国映画日本語吹き替え作品出演規定、それから外画CS放送番組出演に関する特別規定というのを含んで日俳連組合員はこの本運用表の出演条件を下回って出演はしておりません。また音声制作会社及び俳優の所属事務所も本運用表を遵守することに決まっております。
こういうことをきちっと守っていれば、決められたランクというのを提示したものでできると思うのですが、新しい事務所や制作会社が増えています。これから先も、どのくらい増えるのか見当つかないですよね。その辺の所を堀さんの方でカバーして頂ければありがたいです。
一時、音声連とゲームランクを作ったんです。自分のアニメーションランクの約2倍というのが基本になりました。ところが新人の本当にまだ日俳連にも入ってこないような子達でも、売れっ子で何十万も貰えるって子達がいたんだよね。
そういう子達が一気に『もう日俳連行きません』『日俳連辞めます』って言い出してしまって、大騒ぎになったことがあるんです。音声連もゲームランクを作ったものの、仕事がそれほど増えたわけじゃないということで、いつしか消滅してしまったんですよ。
今は、そのゲームでお金を貰ってくるのはマネージャーの手腕なんだよね。『ウチは徳本を出すんだったら最低でも20万いただかないと駄目ですよ』って言えるマネージャーと付き合っていけるかどうかという事で、ここはマネージャーの仕事の範疇なのね。
アニメと吹き替えの仕事ってのは自分のランクを計算表に当てはめれば、どこで仕事しても同じお金になるわけです。ところがゲームの場合は徳本さんの事を買ってるマネージャーだったら高く売ってくれるし、相手側に『これしか出せないんだけど』と言われて『ハイわかりましたそれでいいです』って言ってくるマネージャーと組んでしまえばそうなってしまうっていう、そういうシステムなんだよね。
だからね、アニメ吹き替えの仕事と、ゲーム・CM・ナレーションとかっていうのはちょっと分けて考えないとね。我々日俳連が音声連に対して主張している実務運用表を遵守して下さいっていう話とは、ちょっと違う話になってきます。
次の質問に移らせていただきます。こちらは、当たり前の事なんですけれども、なぜ当たり前なのかわからない上での質問になってしまうのでお教えいただけますと幸いです。
⑫オーディションは仕事の一環であると思っているのですが、ギャラが支払われないのは何故でしょうか?
本番を1日に3本掛け持ちをしている時にその場で次から次へと次回の作品を決められていくんです。
それがオーディション代わりになっていたのでギャラ3,000円にプラスα交通費ぐらいでトータル一日3,500円で仕事をした記憶があります。
外画動画に関してはそうですけど、電通・博報堂などの顔出しのCMに関しては100%ギャラは出ました。オーディションであっても。受からない時でもギャラは何%かちゃんと出していただいてました。
このあとは、梶谷さんですかね?
現場のことで教えてください、まだ現場の経験がない人には馴染みがないと思うのですが、
⑬登録用紙が何なのかということと、それを記入する目的について教えていただけますでしょうか。
あるとき、これはいくらなんでも酷すぎるんじゃないかって、役者の間で問題になったんです。そりゃそうですよね。平地で対面で喋っていると思ってお芝居していたのに、蓋を開けたら1階と2階で喋っていたなんてこともあって、そうなると役者からしてみれば、そんな腹づもりないまま演技しているものが放送されてしまうわけで、そういった評価ってすべて役者にきちゃうわけでしょ?「このままじゃ困る!じゃ、調査しましょう」てなったのがそもそものきっかけです。
調査票が始まって、昔の調査票は今と違って下の方に「今日の絵の仕上がり具合は何%」って書く欄があって、そこに毎回記入してたんですね。そして、その番組に出ている人達も名を連ねて提出するってことだったんですけど、あるときからそれは再放送の使用料だったりとか、二次使用料とかいわゆる目的使用料とかを貰うためにも必要になってきて、それと同時くらいに、絵のほうが少しづつ改善されていったんです。
じゃこの調査票は名前を変えて、登録票として使っていこうってなったんです。この登録票の内容は日俳連に送られて、すべてデータ化されています。それが皆さんの二次使用料、再使用料の基本となるものとして使われるようになり、段々と目的が代わっていったんですね。
これは記入することにとても意味があって、データとして残っていれば、いざというときに使えるので、ぜひ皆さんには記入してほしいんです。でもアニメの現場とかだと若い子たちが多くて、そもそも登録票の存在も知らなかったりする。自分の行った現場で知らない子がいたり、登録票が回ってなかったりしたら、その場で説明して渡すようにしています。
続けて、もう一つ質問です。ちょっとセンシティブな質問なんですが、
⑭例えばパワハラやセクハラを受けて、「事務所には言いづらいから直接日俳連に相談したい」といったような事案が発生した場合、相談は受け付けていただけるのでしょうか?
で、それではやっぱり大変なことになると思って、2019年の8月に「ハラスメント、心のケア相談」という名目で、髙山直子先生をお迎えしてハラスメントセミナーを開催いたしました。非常にデリケートな問題ですから、なかなか先輩や事務所にも言いづらい。相談ができる窓口があったら、絶対にいいだろうなって。それは常に思っております。池水専務と私が窓口になって、二人だけでは対処しきれませんので、総代会委員の方の力も借りて、対応していきたいと思っております。皆さんにご協力いただきながら「ハラスメント、心のケア相談」というものを継続していかなくてはいけないと強く思っておりますので、また進捗状況などは改めてお話させていただきたいと思います。皆様、ご協力よろしくお願いいたします。
ハラスメントセミナーをしていただいた髙山直子先生ですが、アメリカでも研究されていたようで、ハラスメント問題はとても複雑で、色々なハラスメントがあって素人ではなかなかケアするのが難しい。だから専門家に聞いていただいて、もちろん個人の秘密を守るような形でやっていかないと、二次的な被害にあってもいけませんから、専門家にお願いするのがベストと思っています。相談があれば、専門家への仲立ちをするなど力になれることがなにかあると思います。今後とも秋元さんたちとも相談して、継続できる形を作っていきたいと思っています。
日俳連も確認番号の発行などで協力した「文化芸術活動の継続支援事業」など、社会的な話は報道やウェブサイトをご覧いただくとして、ここでは今日現場でお仕事をしていく上で、
⑮コロナ禍において日俳連が行っている事、業界全体と協力して行っている取り組みなどありましたら教えてください。
昨年秋の「外画動画部会」で、部会員から「コロナ感染の不安の声」が、切実な問題として上がりました。それまでも、「音声連」さんはじめ、各スタジオ、感染予防に努めて頂いておりました。が、改めて「日俳連」からの要望を出させて戴きました。
密室のスタジオでは、感染リスクが他の業種とは比べ物にならないくらい高いと思われます。その後は、リスク回避に更なるご努力を「音声連各社」並びに「スタジオ経営各社」に頂いております。特にスタジオのスタッフの皆様には感染予防対策に務めて下さり出演者一同、心から感謝申し上げます。また、出演者の皆様にも、様々な制約がある中ご協力を頂いております。業界内の感染がほとんど出ていない事も、スタッフ・キャストの皆様のお陰と感謝致します。コロナ収束にはまだまだ時間がかかるかと思いますが、一日も早いコロナ収束と以前と同じ様な収録形態が戻る事を願っております。
ですので新人の皆さんに会ったときには、「焦らなくていいから、こういう時だからこそ、ちゃんと勉強する時間なんだと思ってしっかり勉強して実力をつけて、現場に出た時には堂々と仕事をやってほしい!」ということを機会がありましたらお伝えください。
外画動画部会は皆さんの味方ですから、もしこの状況が続いて来年もう一度スライドさせてほしい、ということになりましたら、部会でちゃんと検討して、妥当であればもう一年スライドさせる事もやぶさかではないと僕は思っております。焦らずに、とにかくまず罹患しないこと。そういうことを先輩としてお伝えしていただければと思います。よろしくお願いします。
そういった連絡を密に取って、改善してもらうようなことをした方がいいと思いますので、感染対策が不十分なスタジオがもしありましたらば、事務局に電話等で情報を寄せていただければありがたいです。
最後に、皆様から一言ずつ今日の感想を頂きたいのですがよろしいですか?では、堀さんからお願いします。
今日皆さんから聞いた話や忘れかけていた事、思い出した事を、もう一度精査して、今後さらなる業界の発展の為に考えていこうと思いました。今日はありがとうございました。
一番為になった、嬉しかった事が、今我々も苦しいですけど、若い後輩たち、去年からもしくは今年から、養成所を卒業して活動し始めた方々が一番不安になっている所だと思います。そういった方々に「日俳連やマネージャーさん、業界の方々は、君たちの為にこういった活動をしているよ」とちゃんと教えてあげられる情報・知識がついたというのが嬉しかったです。ありがとうございました。
世代を超えて話をする事ができる「リアル居酒屋日俳連」を実現できるように、まずはコロナ禍にくじけず、一歩ずつ前に進んで行きたいと考えております。都合により前半のみギリギリまでご参加下さいました、平田京子さん、日向さんも今日はありがとうございました。編集後記(日俳連ニュース新企画)で是非ご感想をお聞かせください。ご参加下さいました皆様、本日はありがとうございました。
非常に有意義な時間となりました。我々は知らないことが多すぎる、そしてそれを聞くことをしていなかったんだな、とわかりました。
今は先輩方から、本物の居酒屋ではお話し頂くことができませんが、今回のようにオンライン飲み会を活用して、僕らや、僕らより若い世代の方々に、お話をお聞かせいただけますと幸いです。また企画させて下さい。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
またのご来店、心よりお待ちいたしております!
<企画・文責ニュース編集部>