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【要望書】映画に関する著作権制度の見直しを求めます

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【要望書】映画に関する著作権制度の見直しを求めます

協同組合日本俳優連合(以下、日俳連)は、各実演家団体との連名による要望書を文化庁へ提出いたしましたのでご報告いたします。

日俳連は、かねてより現行の著作権法において、映画著作物に関しては実演家の権利がほとんど認められていない現状に関し、その見直しを求めて参りました。

過去には、文化芸術振興議員連盟等の先生方、マスコミの方々にお集まりいただき、議員会館等で勉強会を開催しております。また、2018年には「俳優の仕事と地位に関する国際間対話」と題したシンポジウムを、国際俳優連合(FIA)との共催で開催し、映画に関する実演家の権利についての課題と変革を訴えております。

これらの運動の継続は久しくなりますが、映画に関する実演家の権利は、50年以上にわたり未だ顧みられておりません。このたびの要望書提出によって、実演家の権利が前向きに見直されることを期待しております。

要望書へ連名にてご賛同頂きました、日本新劇俳優協会関西俳優協議会名古屋放送芸能家協議会日本芸能実演家団体協議会(後援)の各団体へは、改めて厚く御礼申し上げます。

文化庁長官 都倉俊一 殿

協同組合 日本俳優連合(理事長:西田敏行)
日本新劇俳優協会(会長:佐々木愛)
関西俳優協議会(会長:梅田千絵)
名古屋放送芸能家協議会(理事長:舟木淳)
後援:公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会(会長:野村萬)

 

映画に関する著作権制度の見直しを求めます

 

我が国の現行著作権法は、1970年に施行されました。当時、映画は劇場での上映を主な市場とし、映画会社1社による発意と責任により興行リスクを侵して、フイルムで制作・配給されていました。映画産業で働く人々の多くは、映画会社に雇用された従業員でした。
現在、映画制作には、デジタル技術が導入され制作工程が一変しました。映画の利用形態は、劇場は言うに及ばず、放送、配信、パッケージ化、商品化、ゲーム化等々多様化し、更に、映画界で働く多くの人々は、著作権法が出来た翌年の1971年には映画会社の専属性が解かれ、フリーランスとなっております。
製作に伴う興行リスクは、投資家・映画利用者等で構成する製作委員会によって、リスクが分散され、リクープの予測が立てられるようになり、製作本数が増加しました。しかし、一方で製作委員会について著作権法上の規定がされていないため、収益が製作委員会に偏った流れ方をしていることが指摘されています。
このように映画の製作形態・流通の在り方、そして収益の状態が全く変化した中で、53年前の現行法が運用されています。国際条約、諸外国の映画に関する実演家の権利についての考え方の変化を踏まえ、我が国著作権法の映画に関する規定の改正をお願い申し上げます。

〇映画の興行リスクは、映画会社が1社で負うものでした。
映画やアニメーションは、従来、1社の製作会社が興行の成功・不成功のリスクを負い制作するものでした。現行著作権法で、映画著作物の著作権者は映画製作会社であるとされている一番目の理由は、興行リスクを承知で、映画製作会社1社が映画制作の発意を持って責任を負うところにありました。

〇主な監督・俳優・スタッフは、映画会社の従業員でした。
更に映画製作に携わる監督・俳優・製作スタッフの多くが、映画製作会社に雇用されており、専属制が敷かれていたことが、映画製作会社に映画著作権が集中した二番目に大きな理由でした。

〇俳優・監督・スタッフの雇用は解かれ、フリーランスになりました。
俳優たちは、現行著作権法制定時に、映画の主役である俳優に権利がないのはおかしい。経済的権利を持つべきであると主張をしましたが、出演者の人数が多く、権利者が多くなるということは、映画の流通の際に許諾を得ることが困難になり支障が生じるという反対意見が論じられました。そして、先述のとおり、当時は監督・俳優等の多くが映画会社の従業員であったため、映画の著作権は、結果として雇用主である映画製作会社に集中することになったのでした。
しかし、現行著作権法が施行された翌年の1971年に映画5社の専属制は廃止され、監督、俳優、スタッフは各社から解雇され、フリーランスとなったのです。

〇映画の用途の多様化は収益の増大をもたらしています。
現行法制定時の映画は、封切館から、弐番館、3番館と映画館を流れていく興行収入が映画の主な収入源でしたが、現在は、放送、配信、ゲーム展開、パッケージ化、商品化と映画の多様な流通市場が開発され、興行収入の3倍を上回る収入が上がっているといわれています。

〇そして、興行リスクは分散されました。
映画製作者1社が負っていた興行リスクを分散する形態として、日本では世界的に珍しい多数社による「製作委員会方式」がとられるようになりました。製作委員会への出資スポンサーとしては、放送局・映画制作会社・広告代理店・出版社・配信会社・ゲーム会社・玩具メーカー・ビデオソフト出版社・芸能事務所・スタジオ等の他、純然たる投資目的の商社、工務店等が挙げられます。

〇映画のリクープ(採算)予測がつきやすくなりました。
製作委員会には、多様な映画の利用に関連する企業が名を連ね、自らの作品利用から見込める収入に応じ投資を行う事から、企画当初の段階で採算予測がつきやすくなりました。このことから製作本数が増えたことは業界にとって大きなプラス要因です。

〇現行著作権法が映画会社に権利を集中した理由は無くなりました。
このように、映画製作者が負っていた興行リスクは、多数の製作委員会構成社に分散され、俳優・監督・スタッフの多くは映画会社の被用者ではなくなり、映画に出演・参加した権利者として対等に権利主張すべき立場となったのです。
映画の制作にはデジタル技術が導入され工程が一変しました。流通に放送、パッケージ化さらに配信、海外市場等々が加わり、現行法制定時の制作環境は全く変化して、新しい利用に対する使用料が発生しているのです。
俳優等は権利者が多いという流通上のネックも、流通の妨げにならない方式で権利処理されている事例が既に存在することから、映画著作物に関する法制度の見直しを制限する理由とはなり得ません。

〇製作委員会は著作権者たりうるか?
著作権は、作品を創作した者が有する権利と考えるのが法の精神であり、その権利を第三者に移転するためには報酬の支払いが確約されるべきであると考えます。
製作委員会に関しては著作権法で何の規定もないまま、著作権者の地位に滑り込んでしまいましたが、製作委員会は以前の映画製作者とは明らかに異なり映画の利用者・投資家的色彩が強くなっています。そして、映画の製作委員会に多くの富が流れ、実際に制作に従事するクリエイターの経済的状況が恵まれない状況があると指摘がされ公平な利益配分がされていないことが問題となっています。早急な法的な対応が求められます。

〇映画の二次利用報酬が俳優に支払われるのは世界的スタンダードです。
欧米においては、映画の利用形態に応じた報酬が実演家に支払われるようになっていますが、日本の俳優には映画の二次利用に関する報酬は支払われていません。
2012年、北京条約によって、視聴覚的著作物に実演家の権利を国内法によって規定することが出来る新しい規範が設けられ、我が国は世界で4番目に北京条約を批准しています。日本においても現行法の改正によって諸外国並みの権利を実演家に与えることが適切であると考えます。同時に監督等創作に参加した著作者に適正な報酬が支払われる法改正を早急に行うべきと考えます。

参考資料:
『受け継がれてきた俳優たちの願い』2014.4 日本俳優連合
『映画に関する諸問題』2019.3 著作権叢書27、公社著作権情報センター
『俳優の仕事と地位に関する国際間対話』2018.9 日本俳優連合