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「生成AIに関する音声業界三団体の主張」を発表しました

約5分
「生成AIに関する音声業界三団体の主張」を発表しました

音声業界3団体(日本俳優連合、日本芸能マネージメント事業者協会、日本声優事業社協議会)は、11月13日の14時半より文部科学省会見室にて、「生成AIに関する音声業界三団体の主張」を発表しました。主張は3つとなります。

① 生成AI音声を、アニメーション及び外国映画等の吹替では使用しないことを求める
② 生成AI音声を学習・利用する際は、本人の許諾を得ることを求める
③ 生成AI音声には、AIによる生成物であることの明記を求める


主張の全文
ダイジェスト版の会見動画は、以下よりご確認ください。

生成AIに関する音声業界三団体の主張(PDF:208KB)


生成AIに関する音声業界三団体の主張

2024年11月13日

協同組合日本俳優連合
一般社団法人日本芸能マネージメント事業者協会
一般社団法人日本声優事業社協議会

生成AI技術の急速な発展とともにあらゆる分野に混乱が巻き起こる中、AIの影響は声の分野にも及んでいます。インターネット上のSNS等においては、実演家(俳優、声優、歌手等)の声を無断利用した音声や動画が無数に公開されており、現在の状況は無秩序と言わざるを得ません。

このたび音声業界三団体(協同組合日本俳優連合、一般社団法人日本芸能マネージメント事業者協会、一般社団法人日本声優事業社協議会)は、AIではなく生身の実演家の演技によってこそ真の「Anima(アニマ)=魂 」を作品に吹き込むことができると考え、今後とも実演家の声の権利と声優文化を守りながら、AIとの適正な共存方法を模索するためにも、共同で主張を発表いたします。
※ Anima(アニマ)は、魂や生命を意味するラテン語。Animation(アニメーション)の語源。


【生成AIに関する音声業界三団体の主張】

① 生成AI音声を、アニメーション及び外国映画等の吹替では使用しないことを求める
② 生成AI音声を学習・利用する際は、本人の許諾を得ることを求める
③ 生成AI音声には、AIによる生成物であることの明記を求める

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① 生成AI音声を、アニメーション及び外国映画等の吹替では使用しないことを求める
アニメ・吹替等の創造表現においては、呼吸をしないAIではなく、生身の実演家が演技をすることで作品に生命が吹き込まれ、その作品の品質が保たれると考えます。演技の領域は、人間こそが行なうべきものと確信しております。
私たちは、生成AIのみならず新たな技術に対して、闇雲な規制を行うことを求めてはいません。ただし、新しい技術の無秩序な濫用によって、未来の実演家の成長が妨げられ、また一般視聴者の感性が阻害される可能性を危惧しています。生成AI技術との適正な共存を実現するためにも、AIは人間の「補強ツール」であり続けるべきと考えます。

② 生成AI音声を学習・利用する際は、本人の許諾を得ることを求める
内閣府(AI時代の知的財産権検討会)の「中間とりまとめ ※1」(2024年5月公開)では、「声」について「パブリシティ権による保護は及ぶと考えられる」と明記されています。また、利用の態様によっては、不正競争防止法の規制が及ぶ可能性や、詐欺罪や偽計業務妨害罪などの刑事罰を負う可能性についても触れており、名誉毀損など民事上の責任が生じ得ることへの言及も見られます。
実演家の「声」の無断利用については、各種法令に抵触する可能性が極めて高いと考えられるため、私的使用を超える利用 ※2の際には実演家本人の許諾を得ることを求めます。また、実演家が故人の場合は、所属事務所やご遺族からの確認を必ず取るべきであるとも考えます。
その上で、生成AI音声を用いるビジネスの際は、買取り契約(一回の支払いのみで無期限利用を許可する契約)ではなく、案件ごとに「パートナーシップ提携契約 ※3」をはじめとした個別の契約書を締結することを求めます。
※1  https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/0528_ai.pdf
※2 私的使用を超える利用には、インターネット上のSNS等での公開も含まれます
※3 一般社団法人日本声優事業社協議会の作成した「パートナーシップ提携契約」には、生成AI音声を動画(アニメーション)のアフレコ、日本語版吹き替え等に使用することができないこと等、実演家の声の権利を守る内容が含まれます

③ 生成AI音声には、AIによる生成物であることの明記を求める
生成AI音声には、生身の実演家による音声でないことを明記するべきと考えます。

◎ 今後の生成AI分野に望むこと
現在の日本国内法(著作権法第30条の4)では、機械学習において著作物が権利制限の対象とされており、教育・研究用途にとどまらず商用利用でも一定の条件を満たせば自由に学習ができる状態となっています。この状況に対する危機感を音声業界三団体で共有するとともに、実演家の声・肖像のみならず、著作物を学習対象とする際は権利者の許諾を必要とするルールを、日本においても確立することを強く要望します。

以上