日本アニメーション・音響映像訴訟上告棄却
日本俳優連合が支援してきた「日本アニメーション・音響映像とのビデオ化使用料請求訴訟」が、平成17年6月28日最高裁判所の上告棄却決定を受けて、原告団が完全勝利を収めました。 平成12年2月4日提訴以来実に6年、未払い発覚から、13年の歳月を費やしました。
この裁判は、テレビアニメーションをビデオ化した場合、ビデオ化使用料を声優にも支払う音声業界ルールがあるのにもかかわらず、日本アニメーション・音響映像が支払いをしなかった事から始まりました。
日本俳優連合の組合員である声優381人(最終債権者360人)が原告となり、日本アニメーション株式会社(本橋浩一社長)並びにその系列会社、音響映像システム株式会社(当時、小野哲男社長)を東京地裁に提訴したのです。訴えの内容は、日本アニメが昭和61年以降に製作しTVで放送された「愛少女ポリアンナ物語」「家なき子レミ」「ちびまる子ちゃん」など37(31で確定)シリーズのアニメーションが放送終了後、ビデオ化され販売されたことに対する「ビデオ化使用料」の支払いを請求したものです。
訴訟上の争点は、日本俳優連合と音声製作会社及び動画製作会社の間で、昭和45年代後半からビデオ化利用料(アニメ作品製作の目的外で利用した場合には、一定の料率を乗じた目的外利用料を支払うことになっており、ビデオ化に際しても、その利用料を支払うのと引き換えにビデオ化を容認するというもの)の支払いを巡るルール化が話し合われてきました。昭和56年に、中小企業等協同組合法に基づく団体協約であるアニメ協定・覚書が締結されました。締結主体は日俳連と音声連と動画連盟です。
被告日本アニメーションはこの協定に調印しています。協定の内容は、アニメ作品への声優の出演条件と音声製作のルールを定めたもので、この協定・覚書に添付された出演実務運用表によれば、ビデオ化利用料は話し合いによって決めることとされていました。その後、音声連には被告音響映像システムが加盟し、さらに昭和61年には出演実務運用表に、ビデオ化利用料の料率が定められてこれが団体協約上ルールとして、業界においては、長年にわたって運用されてきたのです。
ところが、被告らは、上記作品をビデオ化しながら、このルールに従った利用料の支払いをしませんでした。そこでルールを遵守するよう求めたのが本件訴訟だったのです。
これに対し被告らは、
- 出演実務運用表に定めた出演ルールは団体協約としての効力がない、
- 被告音響映像システムは団体協約に署名していない、
- 日本アニメーションは団体協約に署名したがその後連盟を脱退しているので協約には拘束されないとし、出演契約には、ビデオ化利用料の支払いは含まれない
として争ってきたのです。
そして、平成15年11月6日、東京地裁より判決が下りました。
東京地裁民事44部(滝澤孝臣裁判長)の判決は「被告音響映像は、原告らに請求金額全額を支払え」というものです。業界関係者の努力の結晶である出演契約の有効性がひとまず認められたわけですが、日本アニメに対しての請求については音響映像がビデオ化使用料を声優たちに支払えないことが明らかにならなければ代位請求はできないと、訴えが却下されたのです。
判決どおり音響映像にビデオ化使用料を支払わせるためには、日本アニメに音響映像への支払いを実行させなければなりません。そこで判決を実効あるものにするためには、音響映像への支払い請求を行うのと並行し、原告団は日本アニメへの支払い請求を求めて控訴したのです。 平成16年8月25日、東京高等裁判所第9民事部(雛形要松裁判長)は、控訴審判決を下しました。判決は、「日本アニメは、音響映像と連帯して声優達にビデオ化使用料を支払いなさい」というものです。
平成11年8月24日、声優達が東京簡易裁判所に調停を申し立てて6年、日本アニメ作品のビデオ化使用料の未払いの疑いが発覚してからは13年になります。やっと完全勝利を手にすることができました。しかし、被告側は、即日上告を行い、それから一年、平成17年6月28日最高裁判所は、被告の上告棄却を決定、原告団の完全勝利となったのです。
この判決は、著作権法に明文化されていない実演家の経済的権利を協約、契約で守ることが可能であることを示した画期的な判例となりました。